佐渡島で作られる米は、なぜこんなに美味しいのか?
日本中に数多くブランド米がある中で、その味わいが際立つのには理由があります。
この記事では、佐渡の豊かな自然が育む米の魅力に迫り、日々の食卓が佐渡のお米でもっと豊かになる選び方をお伝えします。
「おいしいお米を食べたいけど、どれを選べばいいのかわからない…」
そんな悩みを解決し、佐渡米をもっと楽しむヒントをご紹介します。
なぜ佐渡の米は美味しいのか?
佐渡は、魚沼・岩船と並び、新潟県の三大米どころの一つとして知られています。
新潟県は、お米の作付面積、収穫量のいずれも全国第一を誇る、おいしいコシヒカリの産地です。
人とトキが共生する島
日本海に浮かぶ佐渡島は、沖縄本島に次いで日本で2番目に大きな島です。
隆起した島が2つ繋がってできた少し特殊な形をしており、本土よりも夏涼しく冬は温暖な気候が特徴です。
また佐渡島は、トキの国内最後の生息地としても知られています。
美しい羽を得るために乱獲されたり農薬の使用により餌が減ったりしたことで、一度は絶滅した特定天然記念物の野鳥トキ。
しかし、中国から提供を受けた親鳥から子孫を人の手で増やしては自然界に放つことを繰り返してきた結果、2023年末時点で自然界に生息するトキは推定532羽まで増えました。
佐渡の空に飛び立ったトキをふたたび定着させるための環境整備、それに基づく独自農法を制度化したものが、「朱鷺と暮らす郷づくり認証制度」です。
朱鷺と暮らす郷づくり認定制度
佐渡市では、2007年、トキの餌場確保と生きものにやさしい米づくりを目的とした「朱鷺と暮らす郷づくり認証制度」を立ち上げ、独自農法による佐渡米ブランド「朱鷺と暮らす郷」を生産しています。
「朱鷺と暮らす郷づくり認証制度」は、安全でおいしい佐渡米を認証する制度のことです。農薬や化学肥料を減らし、「生きものを育む農法」で栽培されたお米を対象としています。
「朱鷺と暮らす郷づくり認証制度」では、以下の6つの基準を設定しています。
- 佐渡で栽培されたお米であること
- 農薬や化学肥料を削減し栽培されたお米であること
- 「生きものを育む農法」で栽培されたお米であること
- 生きもの調査を年2回実施していること
- 水田畦畔等に除草剤を散布していない水田で栽培されたこと
これらの基準をクリアしたお米は「朱鷺と暮らす郷づくり認証米」として認証され、認定マークを使用して販売することができます。
「生きものを育む農法」とは、単に農薬や化学肥料を削減するだけでなく、水田とその周囲に生きものたちが豊かに暮らせる生息環境を作り出す農法です。この農法では、水田に 中干期に水生生物たちが生き延びるため江を設置したり、冬の間も水を張る「ふゆみずたんぼ」、魚が自由に移動できる魚道の設置などを通じて、魚や昆虫、水辺の植物を育みます。そうすることで、それらを餌にするサギやトキなどの鳥類にとっても暮らしやすい環境となり、豊かな生態系の創造に繋がります。
この「朱鷺と暮らす郷づくり認証制度」の開始をきっかけに、佐渡全体にトキを中心とした環境づくりを重視する米づくりが広がりました。
さらに、佐渡米ブランド「朱鷺と暮らす郷」の売り上げの一部は「佐渡市トキ環境整備基金」に寄付され、トキの生息環境の向上に役立てられます。
これらの取り組みは世界にも認められ、2011年に世界農業遺産として国際連合食糧農業機関(FAO)に認定されました。
現在も佐渡には多くの棚田が残されており、美しい里山の風景が広がっています。
佐渡産のお米の特徴
そのようなトキにも人間にもやさしい方法で栽培された佐渡産コシヒカリは、和食にぴったりの風味豊かなお米です。
ご飯そのものを味わうことができる点が特徴で、ひと口嚙みしめるたびに、口の中に広がるコクとうまみを楽しむことができます。このお米が特においしい理由は、佐渡島特有の穏やかな気候と豊かな自然環境にあります。対馬暖流の影響で、佐渡の夏は本土に比べて涼しく、稲がじっくりと時間をかけて実り、豊かな土壌の恵みをたっぷりと吸収します。
さらに、稲の稔りの期間が長いことから、登熟がゆっくり進み、うまみが凝縮されます。これにより、炊きたてはもちろん、冷めてもその美味しさが長続きするため、お弁当やおにぎりにも最適です。
お米の品種ごとの違い
「おいしいお米を食べたいけど、どれを選べばいいのかわからない…」
そんな方に向けて、佐渡で栽培されている7種類の品種の特徴をご紹介します。
噛むたびに広がる、豊かな旨み「コシヒカリ」
コシヒカリは、炊き上がりのご飯が白く輝くような美しい艶が特徴です。粘り気があり、かすかな甘みが感じられ、一口ごとに噛むほど甘みが広がり、余韻が長く続きます。舌触りは滑らかで、ほどよい粘りが心地よく、食べるたびに満足感を与えてくれるお米です。また、一粒一粒に弾力があり、しっかりとした食べ応えがあるのも魅力の一つ。コメ本来の豊かな味わいと香りが強く感じられるため、食事そのものを楽しむことができます。
さっぱりと上品、でも満足感たっぷり「こしいぶき」
こしいぶきは、コシヒカリの孫にあたる新潟県の新品種で、県外ではほとんど手に入りません。コシヒカリと同等の美味しさを持ちながらも早く収穫でき、異常気象にも強いため、安定した品質と収量を確保できます。味や香り、ツヤ、粘りをコシヒカリから受け継ぎつつ、あっさりとした味わいが特徴です。粘りが少なく粒がしっかりしており、冷めても硬くならず、おいしさが続きます。さらに、コシヒカリよりもお手頃な価格で、コスパも抜群です。
一粒一粒に、贅沢な甘みとコク「新之助」
新之助は、大粒でツヤがあり、見た目も美しいお米です。コクと甘み、そして味の厚みが特徴で、粘り強さと弾力がしっかりと感じられます。さらに、冷めても硬くなりにくく、食感を長く楽しむことができます。高温下でも長期間保存でき、品質が劣化しにくい点も魅力です。ほどよい粒感があり、噛むほどに甘みが豊かに広がり、食べ応えのある品種です。
上品な旨味で料理を引き立てる「ゆきん子舞」
ゆきん子舞は耐倒伏性が強く、品質が高いのが特徴です。控えめな粘りとあっさりした旨味があり、一口頬張るとしっかりした触感と芳醇な香りが広がります。モチモチ感が苦手な方にも最適で、主張しすぎずにおかずの味を引き立てる名脇役です。鮮やかな白さとつやがあり、あっさりしていながら食べ応えがあります。さらに、しっかりとした食感の中に芳醇な香りがあり、お財布にも優しいです。
甘みともちもち感、極上の「ミルキークイーン」
ミルキークイーンは、粘り気が強く、もちもちとした食感が特徴の品種です。玄米の表面が半透明で乳白色に見えることから名付けられました。光沢があり、炊き上がりの味も優れています。冷めても硬くなりにくく、お弁当やおにぎりにも最適です。劣化が少なく、炊飯ジャーに入れても黄色に変色しにくいのが特長です。もっちりとした食感で、しっとりなめらか、口にした瞬間に甘みやうま味がしっかり感じられます。
早熟で豊穣、食味も抜群「ちほみのり」
米粒は若干小さめですが、弾力があり食べ応えがあるのが特徴です。適度な甘みとコクが感じられます。
甘みとツヤで輝く「にじのきらめき」
大粒で食べ応えがあり、もっちりとした食感と強い粘りが特徴です。お米の甘みが豊かで、高温耐性と収量性にも優れています。コシヒカリと同等の美味しさを持ち、ツヤのある炊き上がりが魅力です。
お米の農法による違い
「たくさんの農法があって、わからない…」
そんな方に向けて、特徴的な2つの農法をご紹介します。
自然農法
自然農法とは、農薬や化学肥料を一切使用せず、自然の力で作物を栽培する農法です。地域の実情に応じた持続可能な栽培体系を基本にし、自然の摂理を尊重し、環境全体のバランスの良い循環を目指します。自然農法の目的は、より多くの生命が調和し、自然の方向性を引き出すことです。
特別栽培米
農林水産省が策定した「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」に沿って栽培されたお米で、化学合成農薬や化学肥料の使用を一般栽培の50%以上減らして栽培されたものです。
白米・無洗米・玄米の違い
白米・無洗米・玄米には、栄養価や風味、調理の手間などの違いがあります。
違いを知って、自分に合ったお米を選びましょう。
白米
白米は稲の実から籾殻、ぬか、胚芽を取り除いたもので、精米により玄米特有の風味が控えめになり、多くの料理に合わせやすくなります。
無洗米
無洗米は米の表面の「肌ヌカ」を取り除いたもので、洗う手間が省け、うまみ成分や水溶性ビタミン、ミネラルの流出が少なくて済みます。
玄米
玄米は稲の実から籾殻だけを取り除いたもので、ぬかや胚芽が残り、独特の香ばしい風味があります。玄米は食物繊維が豊富で、白米の約6倍、ビタミンEは約12倍含まれています。カロリーは白米とほぼ同じですが、栄養価に大きな違いがあります。
まとめ
佐渡島では、環境に優しい栽培方法によって、風味豊かで美味しいお米が育まれています。
- 対馬暖流の影響で稲がじっくりと成熟する地理的特徴
- 「朱鷺と暮らす郷づくり認証制度」による環境に配慮した栽培
これらによって、佐渡の米は安全で豊かな味わいを実現しています。特に、コシヒカリやミルキークイーンなどの品種は、それぞれの特徴を生かし、多彩な味わいを楽しませてくれます。
ぜひ、佐渡の米を食べて、その風味とクオリティを実感してみてください。